失われた時間を求めて

08.5.15(木)19:30〜
阿佐ヶ谷スパイダースPRESENTS「失われた時間を求めて」
作・演出:長塚圭史
出演:中山祐一朗/伊達暁/長塚圭史/奥菜恵
会場:ベニサン・ピット






阿佐スパの3人と奥菜恵、なんと豪華な舞台なんでしょう。実力のある4人が演じる凝縮された空間。
内容はといえば、私はこの1回でたぶん3割程度にしか理解できなかった。言葉は抽象的で、各々の台詞は一つに繋がるようにして流れた。ただ、私はこのイメージを好ましいと思った。出てくる名前が思いきり日本人だったけれど、街灯やベンチ、トレンチコートやグレーの猫も、やはり20世紀初頭のヨーロッパのように感じたので、私は今でもあの設定は昔のヨーロッパだという事にしている。セントラルパークがあるかは知らないけどね。
冒頭でハラハラと木の葉が舞い落ち、それを観た瞬間「少女とガソリン」のラストと重なってぞくっとした。上から紙が舞う演出が、私は好きなのかもしれない。
奥菜恵は本当に素晴らしい役者さん。活動を再開してくれてありがとう。この4人を観ていると、役者が台詞を噛んだり言い間違えたりするなんて信じられないという気分になるけれど、それは普通よりこの人たちの能力が高いから一度も言い淀みがないだけなんだよね。本当に綺麗な流れだった。
ベニサン・ピットは初めて行ったけど、いい具合に古くて汚くて、ちょっとスズナリっぽかった。この閉鎖されたようなお芝居に合う気がした。席と舞台もかなり近く、3列目の席からだと役者が手前に出てきた時なんかは「目・の・前・です!」という感じ。
長塚さんの声はいつ聴いても最高だし、中山さんの狂気は気圧されるようだし、伊達さんはスマートな紳士で、全員が危うい存在。
今回の話は、言葉を聴いていても理解が追いつかない場面も多々あり。戯曲を読んでみたいと思った。