東北地方太平洋沖地震

どうしても、災害を自分の身に置き換えて考えるというのは難しい。
薄情みたいだけれど仕方ない、想像するだけではわからないことって、沢山ある。
けれど今回は、初めてリアルに災害の恐ろしさを感じたよ。


地震の中心地に比べたら全然だけど、震度5弱というのは私が今まで体験したことのない大きさの揺れでとても怖かった。ちなみに私は埼玉県南部です。
その時たまたま二階の自分の部屋に居たので、いつもの地震の時と同じようになんとなくテレビを押さえていたら、どんどん揺れが激しくなって、隣りの本棚もグラグラ揺れていたので、片手ずつで押さえながら身動きが取れないでいたら停電してしまった。揺れは長くて「これ以上大きくならないで!」と思いながら、次に何をするべきか考えたけれど、必要なものなんて財布と携帯と懐中電灯くらいしか思いつかなかった。
いったん揺れが収まったら、真っ先にしたのは着替え。しょうもないルームウェアだったので、外に出ることになってもいいような暖かい外出着に着替えた方がいいと思って。部屋をざっと見渡して、いつものバッグに財布と携帯、携帯の充電器、通帳、印鑑、手帳、懐中電灯、ホッカイロ、マスク、ウェットティッシュ、化粧品、腕時計を詰め込んでみた。電池、飲み物、食べ物は無かった。ドアも開けた。
急いでテーブルの上にあるコップや鏡など割れたり落ちたりしそうなものを床において、PC机の上の大事なパソコンも床に下ろして毛布をかけておいた。


余震は大きくて頻繁に起こったので、暫くは部屋から出ずに家具を守りながら様子をみていた。時計を見たらいつの間にか最初の地震から30分以上経っていて驚く。一階の仕事場へ降りて父親の無事を確認する。母親は今日に限ってお友達と都内へ出かけていて、連絡がつかないそう。災害時に電話が繋がらないのは普通の事なので、その点は特に気にしなかったけれど、帰ってくるのが大変だろうと思った。


三階の自宅はやはり一番被害がひどくて、納戸の扉が開いて中身が全部落ちていたり、玄関の花瓶や置物が割れていたりしていて、こういうのは映像でしか見た事がなかったので「被害を受けてる」という感じがしてショックだった。台所では食器棚の中で食器が割れてしまっていたけれど、扉が開かなかったのが救い。これが散乱したら危なくて大変だよ。けれど冷蔵庫の扉が開いて中身が落ちたり、棚の鍋類が全部床に落ちたり、ストッパーがない所に置いていたものは全部落ちてしまっていた。
ちゃんとした片付けは後回しで、とりあえず危なくないように端に寄せておく。


停電になった時には気づかなかった重大な事があって。うちのビルはモーターでタンクの水を送り出しているので、電気が止まると同時に水も止まってしまうシステムらしい。しかも自家発電無し。ひどい…酷いけど今言ってもしょうがない。
幸い風呂の残り湯はあったから、トイレは風呂から水を運んでタンクに汲み入れて使うことに。結論から言うと、この動作が一番つらかった。タンクをいっぱいにするほどの水を汲むのが、こんなに大変だとは知らなかったよ。


夕方4時くらいに、市の防災放送で「電気の復旧の見通しは不明」と言っていてかなり落ち込んだ。それまで夜に備えなければならない事に気づいてなくて、慌てて外出。信号もダメになっていて、交差点では警官が交通整理をしていた。街中の自販機も使えない。よく考えれば停電なんだから止まっちゃうのはわかるんだけど、見るまで全然気づいてなかった。とりあえずドラッグストアを目指して駅の反対側まで行ってみると、なんとなんとこちら側は普通に送電されてる!!えーーー
どのネオンもキラキラついてるし、みんなのんびり歩いてるし、線路一本挟んだだけなのに異世界に来たみたいだったよ。こっち口の人は反対口が全部停電してることを知らないみたいで、日が沈む前に買い出しして帰らなきゃ!!と焦っている私がバカみたいだった。
でもこれは良いシステム。同時に停電したらきっと混乱して食料の買い漁りが起きるだろうけど、半分ならスーパーなども対応できる。何より、少し歩くだけで何とかなるという安心感がある。


ドラッグストアも普通に空いてた。とりあえず暖房ないからホッカイロ。余っても保存が利くシリアルバー。ラジオと懐中電灯の電池。今夜の分はお弁当でも買おうとヨーカドーの地下へ行ったら、やはりいつもより少し混んでいて、欲しかったお弁当系の総菜はほぼ売り切れ。なんとかごはんになりそうなものと朝食のパン、2リットルの水を二本買って、日没ぎりぎりで帰宅した。
母親からも連絡があって、都内に友達の親戚の家があるから今夜はそこに泊めてもらう事にしたと。さすがに何時間も連絡つかないと心配になるので、やっと一安心。


どんどん闇が深くなってきて気づいたのは、ロウソクがないという事。地震の時は火事になるからロウソクはいけないというのはわかっているけれど、もし懐中電灯の電池が切れたら完全な闇になってしまう。それはどうしても避けたいので、ひとつロウソクを用意しておきたいと部屋を探すと、昔もらった可愛らしい動物型のロウソクがあった。かわいい!けど小さい!!これじゃ30分ももたないよ。。。
が、そういえば大学の時ロウケツ染めで使ってそのままにしていたパラフィンがあることを思い出し、それを使ってロウソクを巨大化させることに。陶器の入れ物の中央に動物ロウソクを置いて、その周りにパラフィンを敷き詰めていざ着火。ちゃんと熱で溶けて一体化してくれました。もし消えてもいいように、紐に溶けたロウを吸わせて予備の芯も作っておいたよ。ロウソクの作り方なんて知らないけど、なんとかなった。
もちろん火災にならないように、自分が座っている目の前に置いてすぐに消せる状態にして使っていた。外では東京電力から「復旧は明日の朝以降になります」と宣告していて、がっかり。


テレビが見られないのでラジオを聞きながら、たまに携帯でツイッターを覗いたり。真っ暗で他に何もできないので、ツイッターが有り難かった。幸い携帯の充電は沢山残っていたけれど、刻々と減っていくのであまり使えず、ただ時間が過ぎるのを待っていた感じ。23時頃にそろそろ寝ようかと思っていた時に、唐突に電気が復活!!


すごいっ、明るいってこんなに嬉しいんだ!電気があるだけでこんなに安心するなんて!!!それと同時に水も復活して、これが何より嬉しかった。トイレ使うのが大変だからのどが湧いても水分控えていたし、手もウェットティッシュでふくだけだったけど、こういう心配をもうしなくて済む。嬉しいよう。断水していたわけではないので、他の家はこれほど不自由ではなかったかもしれないけれど、こうやって8時間も電気と水が断たれた経験が初めてだったので、今回は今までと段違いに「被害に遭ってる」感じを受けた。


もちろん津波が来た地域の大変さからしたら何でもないし、神戸の時みたいにライフラインが何日も断たれたわけじゃない、都内から何時間も歩いて家に帰った人もいっぱいいる。自分なんて全然たいしたことない。けど今まで全く災害を受けたことがなかったので、実感としてわからなかった大変さが、今回でやっとわかった。これはとても貴重な体験。
そしてまたすぐに忘れてしまいそうになる「日頃から備える事の大切さ」を忘れないように、ちゃんとこうやって書いておくよ。