エピソード2(昨日の話)

朝の通勤電車は、心持ち普段よりも空いているようでした。斜め前方、吊革につかまっている男性二人が言い争いを始めます。
「オイ、腕が邪魔なんだよ!」
「はっ?お前が肘をつっぱってんのが悪いんだろ!」
「お前だろ!ふざけんなよ。」
歳は30代と40代でしょうか。とっくに“いい大人”も過ぎています。その2人が声も高らかに電車の中でどつき合いです。流石に数分後にはどちらともなく黙りましたが、若い方の男性が降りる駅に着いた時、安心したのか最後の牽制を始めました。そしてまたも同じ事を繰り返した末、若い男性は去り際にこう言い放ったのです。

「ハゲ!!」

…あぁ、最後の最後にそんな失態。残念ながらこの勝負あったようです。いかなる状況でもその一言でたちどころに分が悪くなるという恐ろしい言葉「ハゲ!」「バーカ!」「デブ!」耳にするだけでも恥ずかしい、いやむしろ辱められているような錯覚を起こす程の幼稚なケンカ言葉を、まさかあんな大衆の前で解き放つなんて。その勇気に乾杯。おそらくあの場にいた全員が恥ずかしさによって0.5℃体温が上昇したことでしょう。