たのしい

行ってよかったな。今日みたいな綺麗に晴れた秋の日に行けてよかったな。動物園には野生を失った動物たちの、独特の切なさがあるのは否めない。特に上野は設備も古いし、檻も狭い。だけどやっぱり楽しい空間ではある。平日の昼間は思いのほか人がいっぱいいた。親子連れ、小学生の団体、つき合いたてのカップル、友達同士で遊びに来た学生さん、カメラを持ったおじさん、散歩がてらのお年寄り。もっと空いている方がいいと思ったけれど、楽しそうに笑うお父さんの声には幸せが含まれていたよ。
パンダはその人気を未だほんの少し残していて、檻の前には小さな人だかりが出来ていた。ぼんやり座っている彼に対し、みんな思い思いの感想を投げかけていた。パンダはふかふかだ。
コビトカバは今日もつるっとしていた。あんなに小さかった子どもは、もう他の大人と同じサイズになって草をはんでいた。
大きさは感動する。「象が大きい」という心構えはあるけれど、シマウマやライオンの大きさは突然で驚く。特にカバとサイは、地上で一番大きいと錯覚する程だ。中身がみっちりしている。

広場のイチョウはいつの間にかもう紅葉を始めていて、夕暮れには小さな羽虫があちらこちらに集団を作っていた。空は高くて、乳白の青にだんだんとオレンジが加わる。秋の夕暮れだ。