ゆれる

ここまでしっかりどっしり芯の通った映画は久しぶりに観た。泣いた。
映画『 ゆれる 』公式サイト
最近見たい映画が溜まっていて、初め「ストロベリーショートケイクス」にしようかと思ったらまんまと明日からの公開。「パビリオン山椒魚」もかなり気になっていたけれど、まずはこっちにしておいて正解でした。やっぱりずっと望んでいたものから観ないとね。



噂では聞いていたけれど、本当に良質の映画だった。
私はエンドロールは、その作品がかなり良かった時にしか見ない。どうも暗黙の了解で「映画好きならエンドロールもしっかり見るべき」みたいな空気がある気がするんだけど、個人的にはその時の自分が欲していなければさっさと席を立てばいいと思うし、実際自分も早々に出てしまう事が多い。
今回の「ゆれる」は本編が終わっても立つ気にならなかった。それくらいの重さがあった。良く出来た映画には重さがある。
全くもってオダギリジョーは素晴らしい。そしてそれを上回る勢いで香川照之が素晴らしい。ストーリーと役者と音楽と映像と、全てが欠ける事なく綺麗に絡み合っているからこそ人を惹き付けて心に響く映画になる。
香川照之の巧みさといったらない。表情一つ言葉一つでも、その裏に隠された感情や僅かな心の変化が感じられる。今まで彼の事侮ってましたすみません。
それはオダギリジョーにも言える。この人は、良い役さえあればどこまでも繊細な演技をするんだね。あとミーハーなところで言うと、冒頭のキスシーンでもうやられる。正直かっこよすぎる。
脇役のキム兄ピエール瀧も普通に問題ない演技をしているんだけど、やっぱり映ると「検察官だ」じゃなくて「キム兄だ」と思ってしまうのよ。そこが本物の役者との違いかも。
映像で印象的なのは、猛(オダギリ)が渓谷で木漏れ日のなか花の写真を撮っているシーン。気が遠くなるほどに美しかった。このままカメラのCMで使えそうだとも思った。そしてラスト、猛が昔のフィルム映像を見て家を飛び出すあたりからはずっと泣いていた。
この「ゆれる」を見たときの感覚は「誰も知らない」を見た時に似ている。とにかく良かったのでベタ褒めでした。参った。