SISTERS

08.7.10(木)14:00〜
出演:松たか子/鈴木杏/田中哲司 他
作・演出:長塚圭史
場所:PARCO劇場
PARCO劇場


ネタバレしてます





長塚さんの作品を観ている時は、いつも息をひそめて身を硬くしてしまう。それこそ呼吸もできるだけ浅く。自分の意志ではなくて、いつの間にか張りつめている空気に自然とそうなっている。広い会場なのに圧倒的に音が少なくて、役者の言葉が直接届く感じが好きだ。
そして見終わった後はしばらく、ざらっとした風景みたいなものが残って、目の奥に切り取られて残っていた場面がフラッシュバックする。今回はやはり、ラストになだれ込む赤い彼岸花。松さんの黒い服も印象的だった。
息が詰まるような内容ではあるけれど、最後は僅かばかりの救いがあるのも良い。ハッピーエンドなんて興ざめで嘘くさい。ずぶずぶと潜っていった人間が、やっと自分の力で地上に顔を出せる。そのくらいで十分なんだ。
今回の水の演出がとても素敵。私は遠くからだったので、いつから舞台上に水が入ってきていたかもわからなくて、でもいつのまにか歩くたびにぴちゃぴちゃと音がしだして、そこではっと水がある事に気づいた。松さんの狂気の独白が始まる頃には結構な量に。女2人の涙のような気もするし、お腹の中の羊水にも、まとわりつく闇の象徴にも見える。
その頃には緊張もピークだったので、ラストで亡くなった奥さんがロープに吊られた格好で落ちてきた時はぞっとした。赤い彼岸花は鮮やかで、目に焼き付いている。
とにかく女優2人が最高だった。狂気じみた松さんは本当に素晴らしいし、愛らしさと冷たさの両方を共存させられる鈴木杏もまた素晴らしい。彼女の安定して張りのある声は舞台向きだなと改めて思った。すごく好きな作品だったよ。
会場を出る前に舞台の水を見に下へおりたら、思ったよりも深くなかった。そうかーなんて思っていると後ろの方で「あ、私もあのバラ見たいから下に行こうよ」的な会話が聞こえてきて、この彼岸花をバラと思って見ると、この話もだいぶ印象が違うだろうよと思った。